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しょうじゅざん えんりゅうじ松寿山 延立寺

静かな八王子市の高地で、雑木林に抱かれるように建つ延立寺。市内で数少ない浄土真宗の寺院であり、広範な地域から門徒が集まっている。原則的に建物が建てられない市街化調整区域にあるため、現在の本堂を建てるにあたって多くの植樹が行われた。本堂を守るように並ぶ桜やねむの木、竹などの豊かな緑が目を楽しませてくれる。高台にある墓地から見下ろす広々とした風景は圧巻だ。
住職の活動は延立寺内に限らない。ユニークなのが、お寺を飛び出し八王子駅近くに作られた「アミダステーション」だ。無料塾や子ども食堂、映画会など、幅広い活動に場を提供。狭義の仏教にとらわれず、広い視点で仏教の世界観を伝えている。

歴史

延立寺は三度の移転を経て現在の地にたどり着いた。江戸時代前期の寛永8(1631)年、長州・萩の庄に創建。天和2(1682)年、現在の東京都港区にあたる武蔵国豊島郡柴井町に移転する。その後享保15(1730)年に現在の東京都港区三田に移転し200年超の時を重ねるが、昭和20(1945)年、東京大空襲で本堂をはじめほとんどの建物や寺宝が焼失してしまう。過去の詳しい歴史を伝える史料も焼けてしまったそうだ。

戦後、焼け跡にバラックを建てて再スタート。戦時中の疎開で残された御本尊や過去帳と共に、徐々に往時の姿を取り戻してゆく。そんな頃、地区の再開発事業が進む中で現在の八王子市犬目町の土地の紹介を受け、昭和47(1972)年この地に移転した。以来、自然豊かな地の緑をさらに色濃くしながら、移転当時の本堂を守り続けている。

 

住職インタビュー

■お寺を作るという意識

私は延立寺住職を務めるほか、「認定NPO法人アーユス仏教国際協力ネットワーク」理事長、お寺と一般の方との縁をつなぐ「寺ネット・サンガ」の事務局員や、「自死・自殺に向き合う僧侶の会」事務局長としても尽力しています。こうした活動のきっかけは、当初僧侶やお寺に私がいい印象を持っていなかったことにあります。それでも継がなければならない状況があり、ならば「なぜ自分は寺を継ぎたくないのか」を考えるために、龍谷大学に進みました。すると、授業などを通して差別問題の存在を体感したり、大学で尊敬できる僧侶に出会えたりしたこともあって、知識として学んでいた仏教と現実がつながってきたのです。私がぼんやりと抱いていた嫌悪感は、寺や僧侶自身が仏教を日常生活から遊離させているところから生まれたんだなと感じました。そこから自然と、嫌じゃない寺を自分が作ればいいんだと思えるようになりました。

 

■開かれたお寺として街へ飛び出す

寺にはいろいろな役割があります。この寺は近くに民家が少なく人があまり通らないという立地もあって、ある意味クローズドな場所です。でも、ご縁があった方が安らげる場所になれていれば、クローズドな場所であっていいとも考えています。

とはいえ、お寺は開かれたところでもあります。立地的に多数の人に開くのが難しいなら、開いた場所を別に作ればいいと考えて、八王子駅の近くに「アミダステーション」を作りました。平和、人権、環境、国際協力など、広い意味で仏教精神に基づいた活動であればご自由にお使いいただけるスペースです。その範囲であれば、例えば合唱サークルの発表の場でもかまいません。苦を除いて安楽を与えるという「抜苦与楽」の仏教精神を間接的にでも伝えられる場になればと考えています。

葬儀、法事・法要

葬儀や法要とは「句読点」を打つ儀式だと松本氏は考えている。

「大切な方が亡くなった後も続いていく日常の中で、ご自身を振り返る機会や時間が恵まれる場ということです。浄土真宗では、死というものは終わりではないと考えます。葬儀や法要は亡き方に感謝の気持ちを伝えるもの。そしてそれを通して、今の自分を見つめるためのもの。死を悼む気持ちが時とともに変わっていくのは当然のことで、自分はあのときの自分と違い、これだけ変わっているんだと気づくことこそが儀式の役割だと思うのです」

・斎場での葬儀が中心だが、本堂での葬儀も可能。
・門徒さんのお休み処として利用できる客間がある。おときを依頼する場合、最大50名ほどでの利用が可能。

お墓

境内に一般墓と合同墓を用意している。年間冥加金は12000円以上。常時開門されているので、いつでもお参りができる。

一般墓は山に沿って5段設けられている。家族の同意があればペットの納骨も可能。雑木林の中に咲くやまゆりや桜を眺めながら本堂脇の階段を上っていくと、眼下には人々の暮らす街、遠くには高尾山や陣馬山、そして富士山が広がる雄大な眺めが広がり、とても晴れやかな気持ちに。特に桜の時期は花見を兼ねてゆっくり過ごしていく人が多いそう。2人乗りのリフトが設置されているため、足の悪い方もこの眺めを楽しめる。

・一般墓は下の1段目から順に80・70・60・50・40万円

・合同墓(20万円)の遺骨は33回忌まで壺のまま納められる

※合同墓は初回利用時のみ20万円、二回目以降は無料

イベント情報

法話会(毎月第4月曜日 午後1時より(3月・9月はお休み))

都内の他の浄土真宗寺院のご住職を招き、身近なテーマを取りあげる法話会。質疑応答の時間も設けられている。そのあと客間でお茶をいただける茶話会がある。

新年会(1月第2土日いずれか)

ご住職の法話のほか門徒のみなさんによる踊りや歌の発表がメインだが、門徒に限らず誰でも参加可能な新年会。食事の用意があるため要事前申込。

アミダステーション映画会(原則毎月末金曜日)

過去には『人生フルーツ』、『ヤクザと憲法』、『いただきます みそをつくる子どもたち』など、洋画・邦画問わずドキュメンタリーを中心に上映。終わった後に参加者同士で話し合う時間を設けている。

寺院情報

寺名(ふりがな) 松寿山 延立寺 (しょうじゅざん えんりゅうじ)
住職 松本智量
郵便番号 193-0802
住所 東京都八王子市犬目町681
電話番号 042-654-2429
FAX番号 042-654-6930
E-Mail matsu@ngo-ayus.jp
ホームページ http://enryuji.a.la9.jp/
交通

京王八王子駅前3番乗り場、JR八王子駅前6番乗り場から西東京バス

雨間経由秋川駅行「谷戸」下車徒歩3分、または工学院西経由楢原町行「中犬目」下車徒歩8分

駐車場 30台
地図