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しんぎょうさんしょうねんじ信楽山 正念寺

茨城県常陸太田市は市内全体に丘陵地帯が多く、この南側のふもとに正念寺はある。
境内に一歩足を踏み入れれば、巨大な鐘楼の迫力に目を奪われ、多くの草花で彩られた景色に心和むことだろう。寺の愛犬・モカが境内で日なたぼっこしている姿は、なんと安穏としたことか。

こうした牧歌的な雰囲気に違わず、正念寺は訪れる人々とのご縁を大事にし、ユーモア溢れる取り組みを行っている。特に、訪れるごとにスタンプを押し、貯まったら記念品がもらえる『正念寺 参れー寺(まいれーじ)カード』は、その名のおかしみに、思わず笑いがこぼれてしまう。他にも、『報恩講 法要巡り』や『お寺でライブ』など、意欲的な催し物が盛りだくさんだ。これらの試みの根底には、佐竹知信住職が抱く「寺がどのようにして人々の拠り所になっていけるか」という真摯な思いが込められている。

歴史

実は、明治に入るまで願入寺という寺号だった正念寺。「私は正念寺の歴史で数えれば4代目だけど、願入寺なら19代目なんです」と、佐竹住職は言う。

 

弘安3(1280)年に浄土真宗開祖・親鸞聖人の孫・如信上人が、福島県古殿町に小さな庵を建てたのが始まりで、その後文禄元(1593)年、太田城主・佐竹義宣の招請によって現在の場所(常陸太田市久米町)に移ったと言われている。祝町(現・東茨城郡大洗町)に堂宇(堂の建物)を建立・寄進したのが、水戸黄門として知られる水戸藩主・徳川光圀公だ。これにより久米町願入寺はその後、輪番で寺務を執っていたが、その後しだいに荒廃していった。そこで明治9(1876)年、寿命寺(現・常陸大宮市)の次男・崇信を迎え入れ、祝町願入寺の長女・百合と婚姻。晴れてこの地に継承者が戻る。これにて一件落着と思いきや、明治24(1891)年に崇信と百合は離婚。祝町願入寺との仲はかんばしくないものに。やむなく明治36(1903)年、宮村町(現・東京都港区麻布)に残っていた「正念寺」という寺号を久米町に移し、今に至る公称を得た。現在も正念寺脇に願入寺跡地が残されている。

 

ちなみに現在の本堂は、近年数回の改築・修理をしている。平成元(1989)年には、屋根の梁に鉄骨を入れ、強度を高めた。これが功を奏したのか、平成23(2011)年の東日本大震災で本堂が崩壊することはなかった。……が、壁面だけは見事に崩れ落ちてしまい、こちらも修理をすることに。「あの時は、本当に“見通しのいい壁”でしたねえ」と、佐竹住職は笑う。

住職インタビュー

■“話せる人”がいるだけで、心救われる瞬間はきっとある

今の時代は、ひとりで過ごす人がとても多くなりました。悪いことではないのですが、自分だけの楽しみ方がある反面、悩みや苦しみも、自分の中に抱え込む人が少なくないような気がします。そして悲しいことに、つらさに耐えきれず自ら命を絶ってしまった人の話も、時おり耳に入ってくるのです。そのたび、「周りに話せる人はいなかったのだろうか」「お寺がそういう存在になれないものか」と、考えてしまいます。とは言え、私の幼少期に比べ、お寺へ訪れる人々も少なくなりました。特に若い人は、お寺に対して高いハードルを感じる人が多いのかもしれません。しかし本来、お寺はもっと気軽に顔を出せる場所ではないかと思うのです。そこに行けば、気さくな住職やその家族がいる。そして、自分が何かに躓いた時や、苦しみに打ちひしがれそうな時には、その話をちゃんと聞いてもらえる。皆さんにとって、そんな存在でありたいと思っています。

 

■「お寺は遊びに行くところ」。だから一緒に楽しみ、ご縁を繋ぐ

お寺に来てもらえる機会を増やすため、私たちは色々な企画を立てることにしました。例えば、『正念寺 参れー寺カード』は、息子夫婦のアイデアです。「ほかのお寺でやっていたポイントカード。うちでもどうかな?」と息子が持ち込み、それを息子の連れ合いさんが「じゃあ、『参れー寺』ってどうですか?」と発案し、みんなで大笑いしながら作りました。始まってみると、ご門徒の皆さまは楽しそうに「参れー寺」を貯めてくれています。また、昨年から始まった『グランドゴルフ正念寺杯』では、トロフィーを作り、1位を目指して私と妻も参加しました。……ふたり仲良く、最下位とブービーだったんですけどね。皆さんと一緒に楽しむことで、距離が近づくような気がするのです。

今後も、遊び心ある取り組みで皆さまとお寺とのご縁を増やし、それが先々の代まで続く関係を作っていこうと思います。

葬儀・法事

「式で執り行われることのひとつひとつに込められた意味も、遺族の方には知っていただきたいですね」と、佐竹住職。しかし、それぞれの家庭で抱えた事情が違うため、式中で全てを伝えるのは難しく、「落ち着いてからでも、寺へ話を聞きに来てくれたら嬉しいです」とも語る。

葬儀はセレモニーホールで行う場合が多く、県内のみならず、千葉県や栃木県、神奈川県まで向かうこともある。自宅・寺での実施も可能だ。

一方、法事・法要は寺での実施が多く、次いで自宅・ホールで行う場合が多い。お寺で行う場合、食事は外の和食屋などで行うことが多い。

 

お墓

墓は敷地内にあり、新規で建てられる場所はあと10基ほど。また、納骨堂「久遠廟」の利用も可能だ。ペット用の納骨堂も用意している。墓参りは基本的にいつでも可能で、線香やしきみ、花などは自身で用意をする。

 

【一般墓】

初期費用:300,000円(1坪)~

年間管理費用:3,000円~

 

【納骨堂】

250,000円~

合葬:100,000円~

イベント情報

法要(永代経・歓喜会・報恩講)(3月・8月・11月)

3月8日 永代経法要

8月9日 歓喜会法要

11月18日~19日 報恩講法要

報恩講 法要巡り(誰でも参加可能)(毎年10月下旬~12月上旬)

『報恩講法要巡りカード』を持ち、正念寺と近隣の寺の報恩講を、スタンプラリー形式で巡る。「色々な法話を聞いてもらいたくて、近くの寺に呼びかけ実現しました」と、佐竹住職。たくさん巡った人には、素敵な記念品が贈呈される。

聞法会(誰でも参加可能)(毎月1回 8日)

ふだん何気なく使っていたり、よく聞いたりする言葉は、仏教に由来することも多い。そんな日常の仏教言葉を紐解き、そこに込められた意味を勉強する会。先代住職の時から、40年ほど続いている行事だ。

お寺でライブ(誰でも参加可能)(4月8日付近・9月中旬)

オペラ歌手・天下井(あまがい)朱美氏を招き、本堂で花祭りコンサートを催したり、秋彼岸頃には落語会を催しています。お寺でライブ以外にも寺院巡りやグラウンドゴルフなど、誰でも参加可能な行事も行っています。

寺院情報

寺名(ふりがな) 信楽山 正念寺 (しんぎょうさんしょうねんじ)
住職 佐竹知信
郵便番号 313-0123
住所 茨城県常陸太田市久米町20-1
電話番号 0294-76-2058
ホームページ https://shonenji-kume.org/
交通

【電車】

JR水那線 常陸太田駅・谷河原駅・河合駅からそれぞれ徒歩1時間

【バス】

常陸太田駅より上宮行きで、久米十文字バス停下車5分

【車】

常磐自動車道那珂ICから30分

駐車場 30~50台ほど
地図