■新社会人の心に仏教の教えを刻む
地域へお役に立てることがあればと思い、近所にある企業の新入社員20〜30名の研修会を、毎年2日間、10年以上継続して行っています。「お坊さんが新入社員研修? 」と驚かれるのですが、仏教の教えを基に社会人としてのマナーや、人としてのあり方、考え方などについて研修を行っています。そして自分の人生観を書いてもらうんです。すると新社会人としての清らかな覚悟を持つようになるんですね。副住職からはお念珠作りを教えています。「1つ1つの珠は紐でつながっているけれど、紐が切れたらバラバラになってしまう」という話をすると、「人と人のつながりは大切で、自分勝手なことはできないな」ということを学ばれていきます。働くだけではなく、どう生きたらいいのかということを考えることも必要だと思いますから。
■“実践”によって新たなご縁をつなげる
このお寺で特徴的なのは、掲示板です。他のお寺でも行っているとは思いますが、掲示伝道ということで俳句位の長さの言葉を書いて掲げています。仏教的な教えや専門用語ではなく、日常で使っていることわざや読んだ本などから自分が良いと思う言葉を掲示しています。聞いたところによると、近所の中学生や学校の先生方がそれをメモして、朝礼の時にお題に出してディスカッションをされているそうです。掲示は50年ほど続けていますが、お寺の前をよく通られる方がご葬儀の相談に来たりもされるなど、掲示板が呼び込んだご縁がたくさんあります。
また、先代の住職は、遠方のご門徒さんが1日がかりでいらっしゃった際、お寺の周りに飲食店などがないからと、お寺でお蕎麦をふるまっていたんです。その名残でお彼岸にはお蕎麦を出すということが続いたのですが、最近は衛生面の観点からあんパンを差しあげています。昔から当寺には、「良いと思うことを実行する」ということが自然と受け継がれてきていますね。