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しょうりゅうざん きょうねんじ正龍山 教念寺

教念寺は、埼玉県新座市の住宅街に、しっくりと馴染んで立っている。山門はない。一般の住宅と違うのは、唐破風(からはふ)の屋根と、玄関脇にある喚鐘(かんしょう)だ。

本堂に入れば、御本尊の阿弥陀如来像を輪灯の火が照らし、故郷のお寺を思い出すような、温かく懐かしい情景が広がる。

御本尊は、仏師・江里康慧(えりこうけい)師の手による阿弥陀如来像。

住職・龍山利道(たつやまりどう)氏は、生まれも育ちも新座市だ。「地元でお念仏の道場を作りたい」という思いから、この地でお寺を始めた。それから30年、近隣の方々を中心に、ご縁を広く深くつなげてきたという。

歴史

1989(平成元)年、500年余りの歴史を持つ広島県教念寺の出張所として、新座市で布教活動を開始した。活動開始当時、近隣には浄土真宗のお寺はほとんどなかった。

1992(平成4)年に寺報「教念寺新報」を創刊し、月1回の発行を続けている。住職が巻頭法話を書き、妻(=坊守)の龍山みち氏はイラストなどを描いている。その他にも、春と秋には寺報「ふうむ」や仏教情報誌「YAWARAGI(やわらぎ)」も発行し、情報発信に努める。

2004(平成16)年にはウェブサイトを開設し、インターネットを活用しての伝道を始めた。ウェブサイトの作成は、坊守の弟である中川醇誓(なかがわじゅんせい)氏が尽力している。

門徒は少しずつ増えていき、2007(平成19)年には、東京教区埼玉組(さいたまそ)への編入が認められ、同年11月28日付けで正式に、浄土真宗本願寺派となった。「表の『教念寺』という看板の左に『東京出張所』と書いてあったのを、その時に消したんです。今でも消し跡が残っています」と、住職のご子息・龍山崇道(たつやまそうどう)氏は笑う。

 

 

住職インタビュー

■出張所として、何もないところからスタート

駐車場だったこの土地に、お寺を建設することから始めました。1988(昭和63)年、バブルの勢いのある頃で、建築業者はみな多忙でした。たまたま、知り合いの大工さんに相談したところ「お寺を建てるとは、尊いことだ」と言って、引き受けてくれました。玄関脇にある喚鐘は、祖父が住職をしていた広島の教念寺から譲り受け、内陣の香炉は、やはり広島で、ダム建設により移転するお寺から頂戴しました。内陣脇壇下の天女のふすま絵は、ご縁があって、原爆の図を描いた丸木俊(とし)さんが描いてくれました。

最初は、電話一本、鳴りませんでした。しかし、電柱の広告を見た人などが、ぽつりぽつりと訪ねてくるようになりました。

何かお知らせをしないと、と考え、配布物を作ることにしました。それが「教念寺新報」です。最初はワープロで打って切り貼りして、印刷して。何もかも手作りでしたね。今では300号を越えています。

 

■何事も1人ではできない

お寺とは、仏様のみ教えを聞く場所です。私は親鸞聖人のありがたいお導きを、わかりやすく伝えていきたい。しかし、住職1人では何もできないと考えています。みんなが、自分のお寺として「支えよう」とする力がないと成り立っていきません。たとえば「ハンカチを広げてください」と言われたら、1人でできます。バスタオルでも、何とかできるでしょう。でもそれが、サッカーチームを応援するような巨大な旗になったら、どうでしょう。大きくて重くて、1人ではとてもとても広げることはできません。

お寺も同じことです。大勢で広げて支えて、保ち続けることが大切です。古くからの門徒の方、そして、新たに門徒になってくださる方、両方を大事にして、原点を見失わず、ぶれずに代々続けていきたいです。

 

■経典(きょうてん)の研究がライフワーク

今は亡くなられた、梯實圓(かけはしじつえん)先生のご講義に19年間通いました。梯先生は勧学(かんがく)、といって、学者として最高峰の方です。「梯先生は、親鸞聖人とお会いしたことがあるのかな?」とあるはずがないことまで想像してしまうほど、経典の全てに意味があることをお伝えくださいました。なんと奥深いのか、と思いました。

ご講義の音声データをテープでいただくことができ、パソコンに落としてあります。この文字起こしをライフワークにしたいと考え、少しずつ始めているのですが、聞き入ってしまって、タイピングの手が止まってしまうんです(笑)。

大学生の頃は、経典の授業に出ても、一番後ろの席で「早く終わらないかな」と思っているような普通の学生でした。仏法を知って憶えるだけで、食事にたとえるなら、丸飲みでした。しかし梯先生は、見事に料理の素材を組み合わせ、よくかんで味わうことを教えてくださいました。本当に、尊い存在でした。

今も月に一度ほど、築地本願寺の1室で、5、6人のメンバーで、経典の輪読会を続けています。

葬儀・法事・法要

葬儀の際、住職は一番良い袈裟(けさ)や衣を身に付ける。「いよいよお浄土に還る、浄土に生まれるという儀式です。亡くなられた方の名代(みょうだい)としてお勤めをする気持ちで、その方に恥じないように、と思っています。亡くなられた方が創建当時からの門徒さんだと、多くの思い出が蘇ってきますね」と住職は話す。

初めての方でも「いろいろな人生があったのだろう」と思いを馳せながら、威儀(いぎ)を正してお勤めをするという。

本堂で20人程度の葬儀ができ、食事の手配も可能。住職は、他の式場などへの訪問もしてくれる。

親鸞聖人の御祥月命日である11月頃(旧暦)には「報恩講法要」を営む。また、春と秋のお彼岸とお盆にも法要を執り行う。コロナ禍の前は、お彼岸には婦人会でおはぎを作って、出していたという。

3月11日には毎年、東日本大震災の法要を行っている。

イベント情報

仏具おみがき奉仕(随時)

輪灯や菊灯など、内陣の仏具を分解し、門徒の方々とともに磨くご奉仕。時間をかけて、ひとつひとつ丁寧に磨いている。(写真は2010年頃撮影)

除夜会(12月31日)

毎年大みそかにお寺に集まってお勤めをし、深夜0時より、鐘を108回鳴らしている。

教念寺聞信会(随時)

平成8(1996)年、親睦を目的に、門徒による組織「教念寺聞信会」を発足。旅行などの行事を活発に行っており、入会は随時受け付けている。

寺院情報

寺名(ふりがな) 正龍山 教念寺 (しょうりゅうざん きょうねんじ)
住職 龍山 利道
郵便番号 〒352-0004
住所 埼玉県新座市大和田1-20-6
電話番号 048-477-1713
ホームページ https://www.kyonenji.jp/
交通

【電車】
JR「新座駅」下車徒歩12分
東武東上線「志木駅」よりバス、「北野」バス停より徒歩15分

【車】
関越道所沢ICより10分

駐車場 5台
地図