■できるだけ親しみやすいお寺を作り上げたい
私はここの生まれではなく、東京から来た人間です。京都の中央仏教学院で寮の管理を5年間しており、そこで坊守(連れ合い)と知り合いました。東京に比べれば真木の人口は少ないのですが、人同士のつながりは非常に濃いと感じています。地域ごとに組分けされており、お葬儀などがあったら手伝うことが当たり前でした。このように人同士のつながりは濃いのですが、「お寺は葬儀や法事に行くところ。お寺にお世話になるのは亡くなった後。生きている間は……」という風土があるように感じます。お寺との間に見えない壁があり、私はそれを何とか取り払いたい、出来るだけ親しみやすいお寺を作り上げたいと考えています。
例えば、なにげないときにお寺に来られてお話をさせていただいたり、お話を聞かせていただいたりすると、ついつい時間が過ぎるのを忘れてしまうときがあります。その時間が「良かった」と感じてくれている方が、徐々に増えているような気がするのです。
人の命は計り知れない命のつながりのなかで生かされています。そのことに気がつくことは、仏さまに出会っていくことです。お寺が、人と、そして自分自身と出会っていける場所になってもらえたら嬉しいです。そのためにも、子どものころからお寺を身近なものとして感じてもらえるように、毎月子ども会を開催しています。夏には本堂でお泊り会、 冬には焼き芋、花まつりをしたり、遠足などにも出かけようと考えており、今後もずっと続けたいと思っています。
■門徒の方とより親しくなるために
子ども会の活動もそうですが、今年は徐々に、日常を取り戻していければいいですね。新型コロナウィルス流行前までは、希望者を募ってみんなで旅行にも行っていました。最近はSNSなどを見ると、お寺に行きたがっている方が多い、と発信している方がいらっしゃいます。人と関わりたいと思っている方が、間違いなく増えているようです。
私は門徒の方とより親しくなるため、ご法事にこられた方々の集合写真を撮らせてもらったり、法事の後のお茶の時間にお参りのみなさんとお話をする時間を大切にしています。その際、来てくださった方の名前をできるだけ聞いて、メモしています。後日メモを見返して名前で呼ばせていただくと会話も弾みます。これも、お寺に親しみを持ってもらうための取り組みの1つです。
その他に正念寺は保育園の運営もしております。園児も私の話に興味を持ってくれているようです。例えば、私が命の大切さについて話をすると、子どもは理解できたのかその場では分かりません。しかし家に帰って お父さんお母さんに「命はね、大切なんだよ」と話をしてくれるそうで、とても嬉しいことです。私は浄土真宗のお寺の住職で本当に良かったと思っています。「門徒の方々と共に歩む住職」としての人生を、これからも楽しみながら過ごさせていただきたいです。