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しんそうざん しょうふくじ新倉山 正福寺

霊峰富士を間近に望む住宅地域の一角に、堂々たる伽藍を構える正福寺。隣接する同じ浄土真宗の如来寺・大正寺とともに「新倉三カ寺」と呼ばれている。その中ではもっとも歴史の古いお寺であり、開基は平安時代の807(大同2)年と伝えられる。1620(元和6)年(江戸時代)に建立された本堂は、当時関東にはまだなかった技術が使われており、徳川家康が東照宮を造る際に京から呼び寄せた職人の仕事といわれている。1640(寛永17)年に建立された庫裡は武家屋敷風のシンプルな建築。経蔵は珍しい回転式の輪蔵である。

住職の遠山章信氏は、龍谷大学を卒業後、音楽業界で6年仕事をしたのち、当寺の住職となった。東日本大震災の後、毎年福島の子供たちを保養のために滞在させているほか、LGBTQへの取り組みなど、古いお寺でありながら常にお寺としての新しいチャレンジを模索している。

歴史

正福寺の歴史は平安時代に遡る。807(大同2)年に弘法大師がこの地を訪れ、寺を建てるよう弟子道海に命じた。この寺が正福寺の前身である真言宗の富北院(ふほくいん)で、現在の正福寺を望む山中にあった。土地柄、山岳仏教との縁は深く、富士山五合目の別当職(管理する役目)であったとの記録もある。江戸時代のものと伝わる木版画で富士山信仰を表す「八葉九尊図」が寺に残されている。

鎌倉時代の1228(安貞2)年、9代住職道祐が親鸞聖人に邂逅したことから、浄土真宗に改宗し、寺号も正福寺と改めた。

16世住職西円の時代の1620(元和6)年、現在の場所に本堂を建立。20年後の1640(寛永17)年17世住職教円の時、庫裡を建立。天保年間(1830〜1844)24世住職円真の時、輪蔵落成。その後、火災に遭うこともなく、改修を経つつ古からの佇まいを今に伝えている。

2009(平成21)年、現住職31代章信が住職を引き継ぐ。

住職インタビュー

■子供たちの笑い声が聞こえるお寺

私が若い頃に勤めていた音楽業界は、「仏教とはいちばん遠いところにある下世話な世界」と社長に言われました。しかし、寺に戻ってきて感じたのは、実はいちばん近い世界なのではないか、ということでした。どちらも、人と人との関係性がとても強いと思います。当時お世話になった人たちとは今でも仲が良く、さまざまなご縁をいただいています。

アーユス仏教国際協力ネットワークとのご縁で福島の子供たちをお預かりした際には、3ヵ寺が協力し、新型コロナウィルス流行前まで10年続いていました。ボーイスカウトをされている大正寺さんのアイデアでいろいろな遊びを考え、自然体験のインストラクターをなさっている門徒さんや、市の協力も得て、長く続けることができました。

また、好評なのが「ぴよぴよ寺子屋」という赤ちゃんサークルの活動です。孤独を感じがちな子育て中の保護者に、笑顔になれる場所を提供し、励ましたいというのがきっかけでした。気軽な集まりなので、大人同士の情報やモノの交換があったり、参加者のお父さんが雪かきをしてくださったり、自然と親戚のような交流が生まれています。皆さんとても楽しみにされていて、卒業ならぬ「卒ぴよ」の時には親御さんたちが泣かれるほどです。

考えてみれば昔からこのお寺には子供が集っているのです。父の代でも日曜学校をやっていて、いま60代、70代の方が子供時代に通っていたそうです。悩みがあって来た方も、「子供の笑い声を聞いたら気分が晴れる」とおっしゃっていました。

 

■LGBTQについての学びが気づかせてくれたこと

今、LGBTQの方々と交流していろいろ教えていただいています。「うちの寺で結婚式やお葬式ができるよ」など意思表示してもらうだけでも嬉しいとお聞きしました。今度はそういう方々の、お葬式について考えていきたいと思っています。現状は、法名に女性を表す「尼」を入れるかどうか、選んでいただくチェック欄を設けています。

LGBTQについて考えれば考えるほど、阿弥陀さまの「みんな輝く命」という教えをいただいた私たちはそれをちゃんと実践しなければ、と感じます。逆に言えば、LGBTQが入口になってくれて、そこに私たちを導いてくれているのだ、という気持ちになっています。そもそも戦国時代や江戸時代には男同士で愛し合うのも認められていたわけで、今の時代にしか通じない常識に囚われることなく、人それぞれのパーソナリティを受け入れるべき。仏教を学ぶことは、こだわりから解き放たれること……LGBTQを考えることは、それを私に気づかせてくれる良いご縁ですね。

公益財団法人 全日本仏教会では
・多様性を象徴するレインボー
・信仰のシンボルである合掌のマーク
・肌の色にとらわれない、黒い影の色
・全ての個性を肯定する姿勢をアピール
するレインボーステッカー(上図)を用いて、LGBTQの取り組みを社会に発信している。

 

■「お墓に行こう」ではなく「お寺に行こう」と言ってほしい

ある門徒さんが、ご家族を亡くして悲しんでいる時、本堂を貸してください、ただ昼休みの間ここに居させてくださいと言われたんです。その時はっとしました。そうか、私が何かをしなくても、もう阿弥陀さまがすべてお任せとおっしゃっているのだから、場を用意することから始めればいいんだなと。

肩肘張ったご縁づくりではなく、お寺という空間に行ってよかったね、と思っていただくのがいちばん。この先何かの折に「ちょっとお寺に行ってみるか」となれば良いし、そうでなくてもここで一度感じていただいた嬉しさや安心感は残ります。「お墓に行こう」ではなく「お寺に行こう」と言ってもらえるように、葬儀や法事だけではないお寺を目指して、いろいろなことに興味を持ってあちこち顔を出しています。

葬儀・法事・法要

満席で70人まで。
ご自宅、他施設でのお勤めも可能。

お墓

永代使用、生前申し込みあり。
ご遺骨の一時預かりは要相談。
また年間管理費はいただいておりません。

今後、合同墓の計画あり。

イベント情報

ぴよぴよ寺子屋(毎週水曜日10時~12時)

毎週水曜10時〜12時に、赤ちゃんから幼稚園に上がる前の子供と保護者の方が集うサークル。活動内容は特に決まっておらず、自由に参加できます。子供を遊ばせたり、みんなで季節の飾り物を作ったり、不要になった服をやりとりしたりと、つながりを作ることで、孤独になりがちな子育てママにほっとできる場所を提供することが目的です。ボランティアの方々がお手伝いしてくれています。

キッズサンガ(季節ごとに行事を開催)

小学生の子供たちが集まり、工作や体験、ゲームなどを楽しみます。夏休みの始めには「宿題会」を開き、もと学校の先生に教えてもらいながら、夏休みの宿題をすすめます。

御堂コンサート(随時)

不定期開催。
2019年3月には、シンガーソングライターで僧侶でもある、やなせななさんを招いて、法話と歌声をお聞かせいただきました。

花まつり(4月8日前後)

4月8日前後。お釈迦さまの像に甘茶をかけたり、実物大の象さんの像と記念写真を撮ったりして、お釈迦様の誕生日を祝います。
フェアトレード商品の販売などもあります。

寺院情報

寺名(ふりがな) 新倉山 正福寺 (しんそうざん しょうふくじ)
住職 遠山 章信(とおやまあきのぶ)
郵便番号 403-0031
住所 山梨県富士吉田市浅間1丁目5-38
電話番号 0555-22-0850
ホームページ https://buddhist-temple-2867.business.site/
交通

【電車】
富士急行線 下吉田駅より徒歩約9分
富士急行線 月江寺駅より徒歩約12分

【車】
<東京方面より>
中央高速道路 河口湖インターより約15分

<大阪方面より>
東富士五湖道路 富士吉田インターより約15分

駐車場 50台
地図