■“救われがたい人を救う”をモットーに、地域の子どもを学習面で支える
法福寺は、ここ山梨で約450年間、田野倉の人たちとともに歩んでまいりました。私は18代目で、1人でお寺のすべてを切り盛りしています。
実は生まれ育ったのは東京で、得度は15歳の時で比較的早かったのですが、学問好きが高じてしまい、龍谷大学から東京大学文学部に学士編入し、さらに上智大学大学院へ…と、お寺の道から逸れた青春時代を過ごしました。
住職となったのは25歳の時。山梨にやってきた当初、勉学面で大変な困難を抱えているがゆえに、将来に希望がもてなくなってしまった子どもたちが大勢いることを知り、衝撃を受けました。父の、「住職はそれぞれの好きな道で活躍するのが良い」という教えにも背中を押され、お寺の敷地内でマンツーマンの学習塾を開きました。
はじめはご門徒さんのご家族向けだったのですが、だんだんと口コミが広がり、遠方の方やご門徒さん以外の生徒さんも増えました。少し変わった塾で、勉強ができる子はお断りしています。勉強で困っている子を救うための学習塾です。
これまで、たくさんの子どもたちに向き合ってきました。中には家庭で暴力を振るってしまう子や、心の病を抱えている子もいましたし、大変だったエピソードは数えきれないほどです。それでも、「先生の指導がなかったら今の私はありません」と、教え子たちから感謝された時には嬉しく思います。
私は阿弥陀様のようにはなれませんし、立派な人間でもありません。ですが、浄土真宗の「救われがたい人を救う」という教えを胸に、困っている子どもたちのために出来ることを続けてまいります。
■地域に馴染むお寺でありたい
法福寺は、都留組(つるそ:山梨県富士吉田市・西桂町・都留市・大月市と神奈川県相模原市の17ヶ寺の組織)の中で最も小さな寺院です。ご門徒さんが比較的少ない代わりに、お盆とお取越の年に2回、必ずお宅に伺ってお勤めをし、お話をさせていただいています。長い時間をかけて良い関係を続けさせていただいたおかげで、通夜法話では故人とのエピソードを必ず盛り込み、心をこめてお見送りしています。
地域とのつながりは特に大切にしております。小学校の社会科学習での地域探検を受け入れたり、小学校でピアノのミニコンサートに呼んでいただいています。門徒さんとは、近年はコロナの流行状況を見ながらですが、団体参拝旅行など、親睦を深めるためのイベントも積極的に開催しています。
〜 劣らじと 気負った日々の 余裕なさ 今ふと 気づく御光の中 〜
これは私が詠んだ句です。以前は人と比べてばかりいて、なんて駄目なんだと焦る気持ちばかりが大きかったように思います。さまざまな方との出会いがあり、年齢を重ねるごとに、今では、“このままでいい”と思えるようになりました。
時に心が乱されることがあっても、毎朝6時からのお朝事でお経を読むと心が救われ、凛とした気持ちを取り戻すことができます。阿弥陀様と向き合う場があるということが私にとっての救いであり、そういった居場所があることは本当にありがたいことです。
阿弥陀様は誰しもに寄り添ってくれる、応援してくれる存在であることを、これからもお会いした一人一人に伝え続けていきたいと思います。