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ときわさん ちょうえんじ常盤山 長延寺

栃木県那須塩原市の史跡であり、近隣住民の安らぎの場にもなっている、常盤ヶ丘の麓に緑に抱かれるように「長延寺」がある。

参道の両脇には梅の木々が植えられ、厳しい冬が終わると甘い香りとともに春の訪れを教えてくれる。鳥の囀りだけが聞こえてくるような、静謐な場所にある本堂からの眺めはたいへん長閑で、遠くに見える那須連山の雄大な山々を眺めていると、一枚の絵の中にでもいるかのような感覚を覚えるほどだ。

現在の住職は、門徒出身の西山庸平氏。3代目住職の西山蕗子氏から、令和4年4月に継職したばかりである。法学部出身で、一般企業に長い間勤めていたという異色の経歴の持ち主で、古きを守りながらも、生きづらい世の中で、人々に開かれ、寄り添っていける寺にしていきたいと話す。

歴史

「長延寺」は、1885(明治18)年、大田原市佐久山の正浄寺の説教所として「二つ室説教所」が開創されたのが始まり。開拓期の西那須野地区に最初にできた仏教施設で、まだ学校のなかった子どもたちの教育の場としての役割も担っていたという。1887(明治20)年には本願寺門跡明如上人(大谷光尊)が訪れて法話し、記念の松を植樹されたという。その後、1898(明治31)年より本堂の改築工事が始まりますが、完成間近で2度にわたる暴風被害を受け、1907(明治40)年にようやく完成。寺号を持った寺にしたいという門徒の強い思いのもと、1950(昭和25)年、もともと神奈川県にあった「長延寺」というお寺の寺号に変更。現在の本堂は1979(昭和54)年に完成したもので、1985(昭和60)年には、説教所開設100年と長延寺寺号移転50周年記念法要が行われた。

住職インタビュー

【住職】西山 庸和(にしやま ようわ)

■巡り合わせに感謝して

私はもともとここの寺の生まれではく、門徒の家の出身です。生まれは愛知、物心つく前に宇都宮に移り住み、会社員の親の元で普通に過ごしてきました。大学は法学の道へ進んだのですが、同級生に本派の僧侶がいたのが、最初の巡り合わせです。大学院に進んでマスターをとった後は、団体職員として働いていたのですが、体を壊したのがきっかけで1年間休職することに。そのときに、恩師や同級生らを尋ね歩いていたなかに、先ほどの同級生である佐竹先生に浄土真宗の入り口のお話をいただいたんです。旅をしながら経本を読んでいるなかで、自分も仏の道に入ってみようかと思うように。偶然にも、自分の寺も浄土真宗本願寺派。そこで当時の住職のところに、総代を通じてお引き合わせをいただいたのが、今の私のスタートです。令和元年の9月のことでした。最初は仕事を辞めるつもりはなかったので、心の置き所として僧籍をいただきたいと門を叩いたのですが、その2ヵ月前に当時の副住職がお亡くなりになっていて、もしその気があるのであればというお声をいただいたんです。

ゼロからのスタートではあったのですが、振り返ってみると気がついていないだけで、私たちの生活のなかには、仏教というものはよくよく入り込んでいます。私も、小さい頃にお経を読んでいたら親戚のおばちゃんに、上手ねって言われたのを喜んでた自分を思い出しました。仏教はとても身近な存在だったんです。しかし、住職になったのは、ご縁としか言いようのない流れでした。自分の意思も小指の先ほどはあるかもしれませんが、それ以上の大きな流れの中にゆったりと流れてきて、本日まで来たところです。多くの先生方が生涯現役でいらっしゃるなかで、血も繋がっておらず、出会って3、4年も経たないうちに、私を住職にとご決断くださったのは本当に大きなことだと思いますし、感謝しかありませんし、巡り合わせであるというふうにしか思えないですね。

 

■僧侶は仕事ではなく、生きざまである

日々やってること自体は、会社員時代と多分それほど変わりません。1日1日を一生懸命生きようというのもそうですし、何か問題があったら原因を見つけてソリューションする。もしそのスキルが足りなければ、時間を見つけて自分でスキルを身に着ける努力をする。それは、誰もがやってるわけですよね。ただそれを、認めて欲しいとか、誰かを超えたいとか、何かを得たいと思いながらやってるのと、最初にゴールした後でより良くするための努力をするのを考えると、天と地ほどの差があるわけですよね。

僧侶は仕事じゃなくて生きざまだと、よく言われている通りです。やっていることに対する自分の心構え、不安や心の 落ち着き具合は会社員時代の仕事とは全然違います。私は仏教に出会って、そういうふうに思えるようになりました。

もしかしてそういう気づきは、普段の生活の中にもあるかもしれません。しかし、きちんと結び付けてくれる存在が自分の人生の中でいるかどうかは大きいと思います。だからやっぱりご縁なんです。お寺がそのような存在になれたらと思います。

 

■仏教の教えに触れたり、気づく機会を外に出していきたい

私がお寺に来た頃に、ちょうどコロナ禍になってしまったので、これからなんです。以前からやっていたことは続けていきたいとは思いますが、それだけにとらわれなくてもいいとも思っています。お寺にどう呼ぶかをだけを考えていたら、多分これからの時代は難しくなってくると思っています。仏法の教えに触れる機会や気付く機会を、どうやって外に出していけるかということが大切だと。お寺に来るというのはよっぽどすごいことだと思っています。だから自分が外側にどうやって出ていけるのかを考えているところなんです。地域の活動などには積極的にでていきたいなと思っています。呼ぶのではなく自分が出向く。機会があれば、どこまでも。これからが本番だと思っています。

葬儀・法事・法要

葬儀や法要の場では、「何か特別なことを伝えることよりも、人の話を聞くことを大切にしています」と住職。人々の声に耳を傾け、それぞれの想いに寄り添った時間づくりを大切にしている。

・葬儀・法要は50人規模で可能。食事(おとき)の手配などはご相談を。
・ご自宅、式場、墓地など他会場に出向しての法要にも対応している。

お墓

常盤ヶ丘の深い緑の麓に整然と並ぶ一般墓と、20年以上前より運営されている合同墓がある。

冥加金は20万円〜
年間管理費は1,000円

イベント情報

墓前祭(4月7日)

寺の裏手にある常盤ヶ丘には、那須野ヶ原開拓の恩人たち5名の墓があり、「従五位の碑」と呼ばれ、毎年4月7日には、墓前祭が行われる。それに合わせて、近隣の学校に通う子どもたちが、学校の特別教室で長延寺を訪れ、甘茶を飲んでいただくのも恒例行事。

法要・お勤め(随時)

常例法座(毎月16日)
春季彼岸会(3月)
盂蘭盆会(8月)
秋季彼岸会(9月)
報恩講(11月)
など

寺院情報

寺名(ふりがな) 常盤山 長延寺 (ときわさん ちょうえんじ)
開門時間 6時~16時30分
住職 西山 庸和(にしやま ようわ)
郵便番号 〒329-2731
住所 栃木県那須塩原市二つ室74
電話番号 0287-36-2177
交通

【電車】
JR宇都宮線 西那須野駅から徒歩30分

【車】
東北自動車道 矢板ICより約20分

駐車場 20台
地図