【住職】石川 勝徳(いしかわ しょうとく)師
■自らの生き方に疑問を持ち、御仏の教えを学び始める
私が育った麻布は賑やかな街が近く、中高生の頃は決して褒められるような生活ではありませんでした。しかし、高校を卒業するころ、これでいいのだろうかと思い至るようになりました。そこで心機一転「仏教に向き合いたい」との思いの元、龍谷大学の仏教学科に入学。京都の大学を選んだのは、自分自身、一度東京を離れた方がいいという思いもあったのだと思います。
京都での大学生活は、知識として学ぶことのみではなく、仏様のお心との出逢いのきっかけとなり、仏様の教えを拠り処とする想いも深まっていきました。大学卒業後は、中央仏教学院・勤式指導所(雅楽・声明の研鑽)を経て京都西本願寺に奉職。御御堂のお給仕や、雅楽と声明を専門に勤める式務部を希望しました。ご本山では御堂衆として本願寺における法要にて雅楽・声明のお勤めの他、僧侶養成の指導員として勤めるなど、学生時代とあわせて京都に約20年ほどいたことになります。
その後、築地本願寺に異動となった後は、これまでと同じく雅楽と声明のお勤めをしながら、同時に、仏教壮年会、仏教婦人会、ボーイスカウトなどの活動や、様々な記念の法要行事の企画の他、首都圏においてこれまで仏教にご縁がない方々と、新たに仏縁をいただくきっかけとして「築地本願寺[寺と]プロジェクト」において、築地本願寺倶楽部・コンタクトセンター・GINZASALONの企画運営にも携わっていました。「仏教は日常生活から切り離された特別なものではなく、日々の暮らしの中に仏様のおこころを感じていただく」そうした試みでした。
■暮らしの変化や時代に応じ開かれたお寺を目指して
先代の住職から16代目稱名寺住職を継承したのは、2018(平成30)年のことです。全国的に少子高齢化が進み、お寺を護持してくださる方々が減少していくなかで、これまでの思いを受け継ぎつつ、これからもお寺を存続し、み教えを拠り処としていただくご縁を創るにはどうしたらいいのか、お寺としてこの地域にいる住民の皆さんの暮らしの変化にどのように応じる事が出来るか模索し、今の時代の開かれたお寺のあり方について考えています。たとえば、これまで仏教にご縁がなかったけれど、樹木葬・庭苑墓の他、ペットのご縁を通じて、初めて仏縁を迎えるという方もいらっしゃいます。そうしたことが機縁となり「日々の暮らしの中に仏様のおこころを感じていただく事が出来るのでは」と思っています。
■素晴らしい教えと共に生きてきた人生を喜びたい
仏教というのは仏の教えという意味だけではなく“仏になっていく”教えです。これからも仏様のおこころを拠り所として日々精進に務めたいと思います。もし、明日でこの世のご縁が尽きるという日が来ても、いろいろと辛いこともあったけれど仏様の教えと出逢い、その教えと共に生きてきた人生で良かった。そう思えたらいいなぁと思います。
世の中には、生きづらさを感じながら生きている方もいらっしゃるでしょう。その問題を解決することは私には出来ないかもしれません。しかし、お寺にお参りしてよかったと思っていただける、そんなお付き合いができたらと考えています。