■お寺の次男として生まれ、都市開教の僧侶へ
私は、福井県福井教区にある浄因寺の次男として生まれました。小さいときからお寺を身近に感じながら育ちました。
父は、私が中学生になるころに往生し、中学3年生だった兄が住職としてお寺を継ぎました。まだ若い住職を親戚や代務の住職、ご門徒の皆さんが支えてくださる様子を、私も幼いながらに見てきたように思います。
そんな私が仏教の道に進むのは、自然の流れだったと思っています。今となってはわかりませんが、父が健在で、もし「僧侶になれ」と言っていたら、反発して僧侶になる道を選んでいなかったかもしれません。まったく想像の話ではありますが、今思うと、私が僧侶になったのは、そんなご縁の中にあったのかなとも思います。流れに逆らうことなく、ごく自然なこととして、都市開教の住職となることを選びました。
■「ご御門徒ファースト」のお寺をめざ目指して
私がめざすのは、誰にとっても敷居の低い「ご門徒ファースト」のお寺です。
当院では、法事もすべて「正信念仏偈(正信偈)」というお経をとなえます。そこで、正信偈に読みやすい仮名が振られている草譜を製本し、皆さんにお配りしています。通常の正信偈は、行譜と草譜が併記されていて複雑なのですが、草譜のみを記すことで、ご門徒の皆さんも一緒にお経をとなえやすいのではないかと思っています。
また、正信偈を一緒に読んでいただけるよう、YouTubeを開設したり、お寺に参るたびにマイル(=参る)が貯まるマイレージカードを10年前に制作しました。マイレージのキャラクター「マイルン」や、坊守による仏教讃歌のCDをつくるなど、ご門徒の皆さんにお寺を身近に感じていただけるよう工夫しています。
さらに、落語の演芸会「気楽亭」を開催。ご門徒さんに限らず、地元近隣の方に足を運んでいただくきっかけになればと考えています。
■お念仏を通して伝えたい「ともに生きる喜び」
お念仏を通して、私たちが伝えていきたいのは「ともに生きる喜び」です。南無阿弥陀仏というお念仏は、阿弥陀様からわたしたちひとりひとりに向けられたものですが、それは誰もがいっしょにいただけるものでもあります。ともに生まれ、ともに生き、ともに同じ道を行く。一緒にお念仏を称えることで、その思いを一緒に感じることができればと思います。
また、「ともに生きる喜び」には、お念仏を喜ぶ身近な方とのつながりがとても大切です。み教えを通し、自分自身と向き合う中で、自らの生きる方向はしっかりと定まってきます。喜びの伝播とでもいうべきものが、父が子へ孫へと繋がっていくためにはどうしたらいいのか。少子化や時代の移り変わりによって、お寺に足を運ぶ方が減りつつありますが、お寺として何ができるか、次の世代である長男らとともに考えていきたいと思います。